キヤノンと私のEOS 20D [カメラとレンズの話]
私はオリンパスファンですが、銀塩EOS以来のキヤノンユーザーでもあります。
手持ちのEFマウントのレンズはデジタル専用(APS-C専用)のEF-Sも含め現在13本ありますし、その写りも大変気に入っています。とくにオリンパスE-システムは基本的にズームレンズが多く、まだまだ単焦点レンズのラインナップに乏しいので「ここ一番、ここ一発」の明るい単焦点LOVE(笑)な私にとって、EOSは手放せないシステムです。また(自分が買わなくても)キヤノンの新型一眼レフが他社に比べて矢継ぎ早にリリースされるのは見ていて面白く、今使っているEOS 20Dをリプレースしたくなるモデルが出てくるのを心待ちにしています。
以前にもお話したように、私は価格的に手が届かなければ、あまりフルサイズには拘りません。下の写真みたいなAPS-C専用レンズにも結構投資したので、次買う時もどちらかといえばEF-Sに対応しているボディが良いですね。
被写体:Canon EOS 20D + BG-E2 + EF-S17-55mm F2.8 IS USM
撮影:OLYMPUS E-1 + ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro
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さて、そんな私の20Dですが、実は今年モデルチェンジし、後継機種はEOS 30Dという名前になりました。
アップデートされた筐体、背面液晶が2.5インチに拡大し、起動時間は0.05秒短縮され、シチュエーションごとに撮影のパラメーターを変更できる「ピクチャースタイル」対応になり、シャッター耐久性が10万回とアナウンスされました。それ以外の目立った変更は「ほぼなし」でしたが、価格を抑えて一気に15万円程度まで安くなり、現在の最安なんて13万円を切ってるところもあるくらいの破格値になりました。いやあ良い時代になったものです。私が20Dを買った時は18万円もしましたから。
…ってみなさん、どう思います?
本音では「もうちょっと頑張って欲しかった」って気がしません?
思えば旧機種EOS 10D(630万画素)から、華々しいまでのモデルチェンジをし登場した20D。登場以来その性能の高さから中級機種のベストセラーを走り続け、オリンパスをはじめ(笑)他メーカーを圧倒し続けていました。その後登場したエントリーのEOS Kiss DNの快進撃とも相まって、エントリーからプロフェッショナルまで、現在のデジタル一眼レフ「キヤノンひとり勝ち」状態を確固たるものとしたのです。しかし、EOS 30Dへの変身はそれと比較すると、キヤノンユーザーの私からしても、ちょっとチカラが抜けてしまったというか、進化を止めてしまったというか、むしろ手抜き(笑)というか…正直「もうちょっとドラスティックな変更があっても良かったんじゃないの?」という印象です。
個人的に、10Dから20Dへは「魅力150%アップ」な印象でしたが、20Dから30Dへは「魅力5%アップ」ってくらいガッカリさんです。
30Dのデビューの少し前のこと、ライバルであるニコンが昨年「D200」という上位機種を脅かすような中級クラスを投入し、ほぼすべての面で20Dと同等以上の性能を叩き出してきました。我々キヤノンユーザーは当然キヤノンが次のモデルチェンジで「受けて立つはずだ」と思っていたのですが、キヤノンはその後に投入したこの30Dで、前述のようにほとんどスペックを変更せずに「価格を下げる」ことで対抗したのです。
いや、安くなって嬉しいですよ。デジタル一眼レフはまだ高価な製品なので、業界のリーダーであるキヤノンが低価格化に熱心なのはとても良い事だと思います。でも今までは高級機種でも中級クラスでもエントリーでも、キヤノンは他社に比べてモデルチェンジに意欲的で、ラインナップを陳腐化させない地道な努力を怠らず、(ほとんど「後だしジャンケン」的手法ですが…笑)他社の「良いもの」を「さらに良いもの」ではね返すという「強さ」を見せつけていて、おかげでスペック的にも実際の性能も、他社に負けることがほとんど無かったのです。なのにD200とのガチンコ対決は「何故か」避けてしまった…
ちょっと夢のない話だと思いません?
業界の2強たるもの、切磋琢磨して盛り上げていってもらいたいじゃないですか。
前回の(10D → 20D)モデルチェンジがちょっと派手すぎたので、余計に周囲の期待値が高かったというのはあるでしょう。20Dの後継機種が正常進化すれば、ファインダーが改善されたり、AFの性能がより向上したり、防塵防滴のプロ仕様に準ずる高性能ボディになったり、もしかすれば(私はやってほしくないですが)撮像素子の大型化だって期待できるかもしれなかった。まあ勝手な妄想ですがね(笑)。
30Dの消極的に見えるモデルチェンジからは、いくつかのことが考えられます。
【A】D200を超えられるモデルをこの段階で用意(準備)できていなかった。
【B】他社がここまでのものを出してくるとは予想していなかった。
【C】キヤノンのこのクラスはこの程度のカメラで固定しようと考えている。
【A】や【B】ならば、今回は仕方ないといったところでしょうか。次回に期待したいところです。でも、もし理由が【C】だったとしたら、EOSユーザーとしてはちょっと考えてしまいますね。
キヤノンEOS DIGITALシリーズの現在のラインナップは、
カテゴリ | モデル名 | 撮像素子 |
プロ仕様クラス | EOS-1Ds mk2 EOS-1D mk2N |
フルサイズ APS-H(×1.3) |
中上級クラス | EOS 5D | フルサイズ |
中級クラス | EOS 30D | APS-C(×1.6) |
エントリークラス | EOS Kiss DX | APS-C(×1.6) |
という4カテゴリになります。それぞれがそのカテゴリでトップシェアを争うほどのモデルばかりです。それぞれを店頭で触ったり、友人からしばらく借りたりして色々使ってみた経験からいうと、EOSシリーズは「1D系とそれ以外」という印象です。
1D系は全然違います、同じEOSでも別次元のカメラです。1D系を使ったことのある方ならお分かり頂けると思いますが、20Dとかで「AFが遅いなあ」と思っていたレンズを、1Dに付けると思いのほか高速になってしまうことが「普通に」あります。他社製のEFマウントのレンズを使っても、不具合情報はほとんど聞きません。もちろん2倍以上する価格の「プロ仕様のカメラ」なので、それなりの違いにならなければ、1D系を買った人は怒ってしまいますが、ここまで「あからさまな違い」を見せつけられると「中級モデルのユーザー」としては少々複雑な気分です。
フラッグシップを安い新型がある部分では凌駕してしまう「下克上」は、進化の早いデジタル機器では当たり前の事で、ニコンD200は上位機種のD2Xを脅かすほどの実力を引っさげて登場しました。肉を斬らせて骨を断つというか、なかば「捨て身」な行動にも思え、それが企業として正しい選択かどうかは分かりません。でも夢がある。これからもっと素晴らしい世界になっていく、そんな予感を抱かせてくれます。
一方、キヤノンは「他社は他社」として、あくまでも自社ラインナップのバランスを維持する方向に舵を切っている様に見えます。確かに、キヤノンが迂闊にD200とガチンコの勝負をすると、今ある上位機種との差が非常に少なくなってしまい、最終的には上位機種の価格を下げざるを得なくなってしまいます。
30Dのモデルチェンジに肩透かしをくらった私としては「結局キヤノンはそれが嫌なんじゃないのか」という、穿った見方をしてしまいます。確かにクルマでもパソコンでも、売れているならばモデルチェンジはブラッシュアップ程度に留めるという手法はあります。しかしながら1D系を触れば触るほど・・・
5Dや30Dのボディ性能で満足できない方は、
どうぞ思い切ってEOS-1Dシリーズへ!!(笑)
っていう感じにとれ、D200の進化に対して「わざとブレーキを踏んだ」という感覚が否めません。
撮影:Canon EOS 20D + EF17-40mm F4L USM
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銀塩システムもあるので、EOSのボディやEFレンズの資産を処分してまで、ニコンなどの他社に鞍替えする気はありません。また、メーカーの考え方というのは、それぞれあって然るべきだと思います。でももう少し、もう少しだけキヤノンには「夢」を見せてほしい。私はオリンパスファンでもありますが、いつまでも他社を圧倒する「強い強いキヤノン」でいて欲しいと思っています。
昼過ぎから東京は雨が降っています。以前、小雨の日にEOS 20Dで撮影に行ったとき、例の「Err99」が出て撮影できなかった想い出があります。もちろんずぶ濡れで撮影していたワケではありませんでしたが、その日撮影できずに不愉快な思いをしたのも事実です。EOSシステムの原因不明なエラーである「Err99」は、その雨のせいではなかったかもしれないけれど、それ以来ホコリや水滴に強い「防塵防滴ボディ」というものが非常にありがたい機能だと思うようになった次第です。もちろん私がE-1に惚れている大きな理由の一つでもあります。
D200は私の買った20Dとほぼ同価格帯で防塵防滴機能を実現してきました。特にこのごろ元気なペンタックスのニューモデルK10D(13万円程度)も防塵防滴仕様になりました。でもキヤノンでは防塵防滴仕様のモデルはEOS-1D系(40万円台後半以上)じゃないと実現すらしていません。
だからもし、私が次にEOSデジタルを買う時は、1D系のラインナップしか選択肢に入らなくなってしまうのです。文句言わずに金貯めろって感じですか(笑)?
撮影@通販ショップ用:Canon EOS 20D + SIGMA 30mm F1.4 EX DC HSM
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デジカメWatchにこんな記事が掲載されました。
【インタビュー@Photokina 2006】
「多様化するにはデジタル一眼レフ市場はまだまだ小さい」
〜イメージコミュニケーション事業本部長 岩下知徳取締役に聞く
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2006/09/30/4741.html
<本文抜粋>
−− つまり、キヤノンが嫌いな人がいるということでしょうか?
「その通りで、キヤノンが嫌いな人はいます。それは各社の製品に“ファン”がいるからです。ですから、新製品で他社の得意分野に向けてどんなに良い製品を出しても、それが正しく評価されるわけではありません。我々は、今現在キヤノンが好きな人に向けて、もっとキヤノンが好きになってもらう製品を開発することに集中した方がいい。キヤノンはキヤノンが持つ特徴を磨くことで、それまでキヤノンに興味を持っていなかった人に、すこしづつでもその良さが浸透すれば良いと思います」。
<本文抜粋ここまで>
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正直、こんな悲しい事は言わないで欲しかった。
これって「今のままの自分を好きでいてくれる人だけを相手にします!」って宣言でしょう?、何だそりゃ(笑)。別に嫌いじゃねえよ、こっちは「しっかりしろ!」って言ってるんだ(笑)。
「来年はすべてのカメラマンがキヤノンに乗り換えてしまうような、市場を席巻するモデルを出します。期待していてくださいね!!」
くらいのリップサービスがあっても良いじゃないですか、お祭りなんだし(笑)。
今回のフォトキナ。一眼レフ部門ではオリンパスよりも発表が無く、いつものこととはいえ、正直「かなり地味」だったキヤノン。だからユーザーとしては心意気が聞きたかったんですよ。来年はやるぞ!とかね。
前回紹介したオリンパスの例のインタビュー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2006/09/28/4727.html
↑この記事とは、あまりにも対照的だったので、何か言わずにおれませんでした。
頑張れよぉ、キヤノン!!!
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