2015 この1、2年に見た映画 Vol.3 [所詮アマチュア映画批評]
撮影:Apple iPhone6
思い入れのある作品と、そうでもない作品とでは、どうしても書く情報量に差が出てきます^^;
ジャージー・ボーイズ(2014)
クリント・イーストウッドは外さないですね、観てよかったなと素直に思える良作でした。これはかつての「ABBA」のマンマ・ミーアみたいにミュージカルの「舞台を映画化」したもの。内容をザックリ言うとサクセスストーリーとその後の転落というシンプルな図式です。フォーシーズンズは2枚組のベスト盤も持ってるし、映画を観る前も嫁にさんざん知ったかぶりしていましたが、恥ずかしながら劇中に流れたうちの2、3曲しか分からなかったので、このところ改めて聴き直しています(笑)。
マフィアのボス役のクリストファー・ウォーケンは一度見たら忘れられない(くらい怖い顔だと思う)名優です。若き日のフランキー・ヴァリの歌声に感動するシーンのお芝居がスゴかった。名優の演技力にただ圧倒されました。
僭越ながら75点
レオン(1994)
約20年前の作品、恥ずかしながら初見でした。未見の名作への反発心って何故だかあるんですよ。こういうところ素直じゃないんですね。自ら発見したものばかりを重んじる姿勢って、我ながら「いけ好かない自己愛」の象徴だと思う。
映画は大変に面白く、また人物の描写も丁寧で、素直に感動いたしました。改めてナタリー・ポートマンは天才子役だったのだと認識できました。でも冷静に考えると(あのままで良かったはずの)レオンにとって迷惑この上ない話だったと言ってしまったら、非難を受けるでしょうか。
僭越ながら90点
プロメテウス(2012)
相次ぐ続編と、他の有名SF映画とのスピンオフストーリーで、もうすっかり怖くなくなってしまった「エイリアン」シリーズ。そんななか、この映画は「エイリアン・ゼロ」とか「ビギニング」とでも言うべき内容で、それもエイリアンの生みの親であるリドリー・スコット監督が満を持して再登板となっては、内野も外野も期待するなというのがそもそも無理な話。でも「人類の起源」なんて表現しているだけで、エイリアンと関係している映画だとはプロモーションしてないんですね。これ、まるでベイマックスと同じやり方。確かに人類の誕生の秘密みたいなモノを示唆する表現は冒頭からありましたが、今作では単に「登場人物の動機付け」にしかなってなくて、どういう理由があるのかも示されていません。それにしても本当に純粋なSF作品として見せたかったのだろうか。エイリアンの関連映画と聞いて映画館に行く人と、それを聞いて敬遠してしまう人の割合でも調べたのだろうか。
さて話を戻してこの映画、最初のエイリアンのストーリーの「30年くらい前」という設定なんだけど、VFXやCG技術のおかげでまるで時系列が逆転しているかのようなテクノロジーが散見されました。エイリアン公開時は1979年、これは仕方ないですかね。でもスターウォーズの新三部作(I、II、III)でもそうでしたが、こういうのは慎重にやらないとホント目立ちます。さすがにブラウン管のモニターを採用しろとまでは言いませんが、人間側のテクノロジーをあえて抑え気味にしておいて、スペース・ジョッキーの起動シーンだけ派手にしておけば説得力もあったのに何だか勿体ない。
またストーリーに関してですが、内容がてんこ盛り過ぎてまとめ切れていないと感じました。観ていて分かるくらい圧倒的に時間が足りない。キャラクターのセリフも足りなければ、動機付けも何だか甘い。ある人物だけ急に何かの謎が解けて唐突に叫びだしたり、また金目的で集まっただけの粗暴な連中が、いきなり正義感に目覚めて自分を犠牲にしてしまうような行動に出たり、話だけ超特急で進めていくために、少々「雑」とも言いたくなる演出が気になりました。これも勿体ない。
CGのおかげで何でも映像化できてしまうからついつい欲が出る。結果あれもこれも作りたくなって、巨匠といえども取捨選択ができなくなる。異星人は何だか分からないから怖いワケで、人間同士のやりとりを丁寧に描くからキャラが立ってくるワケで、内情を知らされてない、単に金で雇われただけの人間が危機に晒されるから、このシリーズは不条理なワケなのです。こういうのはバランス感覚なんでしょうけど、せめてもう少し時間があったのならと感じてしまいました。プロメテウスは既に続編が決定しているみたいですが、この内容を詰め込むのなら、今回の話だけで2作に分けても良かったとすら思います。
とか何とか言ってきましたが、それでも「無条件に80点」と言ってしまいたくなるほど、この映画はワクワクさせてくれるんですよ。グラディエーター以降、作風が「こなれた」印象のあるリドリー・スコット。正直、若い頃の彼のパンク感やスタイリッシュ感はほぼゼロで、その辺りは誠に残念ではあるのですが、訂正ややり直しが好きな監督なので、そのうち3時間を超えるディレクターズカット版とか出してくるでしょう。あなたが初代エイリアンの熱心なファンなら、きっとまた楽しめます。
僭越ながら80点
塔の上のラプンツェル(2010)
ライトなミュージカルです。私はアナ雪よりも面白かったかな。
僭越ながら65点
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脳男(2013)
アメリカのホラー映画でもそうですが、こういう「脳男」みたいな映画は、ファンタジーに徹するかリアルさを追求するかで迷われるところ。その点、慈愛に満ちた松雪泰子さんも、粗暴な正義感を露にする江口洋介さんもかなり「ベタ」です。もちろん迫真ですが、邦画チックというか、テレビドラマと変わらない「以前に何処かで観たようなお芝居」でした。夏八木勲さんが出演されている回想シーンのファンタジー感も含め、私はもう少し抑えたリアルな感覚がある人物描写の方が好きですね。きっと感情が欠落した主人公や、エキセントリックな犯人グループとの対比を際立たせるためなのでしょう。熱い気持ちの正義の味方には感情移入しやすいですから。でもあまりにステレオタイプ的というか、もうそういうのは少し古いという感覚があります。
続編が出たら観たいと思うくらいストーリーはとっても面白いです。またアクションにしろ、グロテスクな表現にしろ、これくらいパンチが効いている方が邦画離れしていて面白い。きっとグローバルに楽しめる日本映画だと思います。予算が潤沢なハリウッドでリメイクしても面白いかな。ハリウッドはあり得ない話でも「ありそうに」持って行くだけの馬力と表現能力がスゴいと思うので期待したいですね。繰り返しますが、脳男では邦画にはあまり見られない「息を呑むようなリアルさ」が見たかった。今のところ「グロテスク表現に息を呑んだ」だけなのが惜しいです。
僭越ながら70点
イニシエーション・ラブ(2015)
携帯電話やメールがなかった時代だから成立するお話。30代後半から40代の日本人なら、きっと身に憶え…いや満足されることと思います(笑)
登場するクルマとかBGMとか懐かしかったですね。内容も印象も全然違いますが、数年前の邦画「バブルへGO!!」を思い出しちゃった。決してグローバルにはなり得ないですけど、かえってこういう映画の方が海外で面白がられたりして。
僭越ながら75点
エージェント・ライアン(2014)
ショーン・コネリーが出演した「レッド・オクトーバーを追え」が好きでしたね。CIA諜報員ジャック・ライアンが主人公のこのシリーズは、まあまあ好きな方でよく観ています。007なんかに比べると圧倒的に体力は「普通」ですが、博士号を持つ切れ者の諜報員という設定で、難題を見事に解決するというもの。まあ基本的にどれも諜報戦でアメリカがロシア(ソ連)に勝てばすべて良しというお話で、どんなにズルいことをやってもアメリカ側は許されるかのような御都合主義も健在です。このシリーズは長年にわたって制作されつづけ、主人公の役者さんが何度か替わり、遂には原作者も亡くなってしまい、若手有望株であるクリス・パインを主人公に据え、最近流行のリブート的な造りになっています。
彼氏がCIAであったことよりも、浮気じゃなかったことを喜ぶヒロイン(キーラ・ナイトレイ)には、笑いを通り越した戦慄が走りました。動ける若いライアンのおかげで、映画としてはとても面白いものになっていますが「これだけピンチになってもアメリカは負けないんだよ〜!」という時代遅れのメッセージにはさすがに飽きてきたかも。こういう作品はアクション映画として軽い気持ちで観るのが正解ですね。
僭越ながら65点
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ひゃくはち(2008)
きわめて普通の日本映画です。良い映画なのかどうかは分かりませんが、観る人の解釈の余地がしっかりとあって、私は心に残ったし楽しく観れました。
僭越ながら65点
トイ・ストーリー・オブ・テラー!(2013)
フルの映画ではなく、トゥーンという名のディズニーアニメ専門チャンネル用に作られた短編アニメです。完璧なラスト作品といって過言ではないPart3(リー・アンクリッチ監督)で終わったかと思いきや、オリジナル監督であるジョン・ラセター監督によるまさかの続編の製作が発表されてましたね。あのラストを受けて「さすがに蛇足ではないか」といちファンとして心配しながら、前哨戦とも言える今回のこのショート作品を拝見しましたが、心配や懸念を吹き飛ばしてくれる、全くもってスキがない作品に仕上がっていました。
監督はアンガス・マクレーンさんという人。これまでもピクサーアニメの同時上映などでトイ・ストーリーのトゥーンを作っていた人物らしいです。っていうか誰が監督やっても作品の水準が落ちないことが本当にスゴい。レンタルしたディスクにはこれまでのトゥーンシリーズも収録されていて、これまたどれも素晴らしい出来でしたし、またその中にメイキング映像も収録されていましたが、いい大人たちが寄ってたかって、子供向けであるはずの作品を緻密につくり上げて行く様、そのチームワークが印象的でした。
宮崎駿さん、富野由悠季さん、押井守さん、庵野秀明さん、そして最近ヒットを飛ばしまくってる細田守さん。これら日本を代表するアニメ監督さんの「有名作品の続編」が、ハリウッドのように監督を変更して傑作になるかと言われたら、その可能性はかなり低い感じがします。アメリカ・ハリウッド・ディズニー式が全てが全て「良いのだ」とは決して言いませんが、思い入れが強いオタク文化発祥の地である日本の方が、特にアニメの制作に関しては閉鎖的というか個人主義なんじゃないかなと思います。
僭越ながら85点
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トランセンデンス(2014)
ネット上の評判がそれほどでもなかったので二の足を踏んでいましたが、観てみたら本当に面白い作品でした。派手なアクションこそないものの、SFが好きならこれは見応えがあると保証します。「人類は未知なるものを恐れる」というテーマが繰り返し語られ、確かにそれに沿って登場人物が動いている。また、かつての映画「ターミネーター」や「マトリックス」シリーズでも使われていた「A.I.(人工知能)というものがもたらす危険性」を、この映画を観る人が「あらかじめ知っている」から、この脚本に余計に翻弄されてしまうのです。切ない終わりも映画として秀逸で「仕方ない」という感想になったと同時に、もしあのまま突き進んでいったとしたら…果たしてどういった世界が我々の目の前に広がっていたのだろうかとも、しみじみ考えてしまいました。これ繰り返しますが「SFやテクノロジーの進化がお好きならば」オススメです。
僭越ながら85点
次回で2015年版はラスト(の予定)でございます。
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